『これじゃあ死ぬまでやめられない!』というタイトルを見て、アルコール依存症と酒のことか?と一瞬思った方がいらっしゃるかもしれない。
いやいや、私がたまたま図書館の新刊書籍コーナーで見つけて借りた本のタイトルなのだ。
『続オイドル絵っせい・これじゃあ死ぬまでやめられない!』(やなせたかし著/フレーベル館)
小さな子供からおじいちゃんおばあちゃんまで、誰でも知っている、アンパンマンの作者、やなせたかし先生の、最後のエッセイ集だ。
うちの子も小さい時、アンパンマン、しょくぱんまん、カレーパンマン、バイキンマン、ドキンちゃんなどが大好きだった。今では、オヤジの私のほうが、アンパンマンのファンである。
昨年の10月に94歳で逝去された、やなせたかし先生は、亡くなる寸前まで、仕事をされていたそうだ。
晩年は、視力も衰え、アシスタントの方と二人三脚で、口述筆記をされていたそうだが、その文章は、素晴らしい。流石は現役の漫画家であり、世の流れをきちんと把握されており、歩きスマホの問題も、さらりと書かれている。
先生の闘病歴が、また尋常ではない。
67歳:腎臓結石
72歳:白内障
79歳:心臓病
81歳:膵臓炎
82歳:緑内障
83歳:腸閉塞、糖尿病
85歳:腎臓癌
86歳:膀胱癌
92歳:腸閉塞
と、本には載っているが、その度に、手術したり、カテーテルを入れたりして、乗り越えてきたと、淡々と語っておられる。決して健康ではないけれど、60歳を過ぎてからアンパンマンがヒットして忙しくなり、病気だからと言って休んではいられない!と、仕事に励んでおられる様子が、本を読むとよく分かる。その情熱が、素晴らしい。
全編、とても読みやすく、先生の優しさが溢れている中で、私がなるほどと、勉強になったのが、「ヒヤリ・ハット」と題する一遍だ。HIYARI HATって、重大な事故にはならないけれど、その一歩手前で気付いて、ヒヤリとしてハッとすること。「あー、危なかった!良かったぁ!」
先生がこの言葉をいいと思うのは、ヒヤリとした冷たい帽子という意味にもとれるからだそうだ。冷たい帽子、つまり、頭が冷静であれば、相当数の事故は防げると書かれている。
あー、これ、飲酒にも言えることだなー。酒飲んで頭が熱くなっていたらだめだけれど、シラフの冷たい頭であれば、24時間、冷静に行動できるもの。
先生は、最近はHOT HAT、つまり熱い帽子をかぶっている人が多いとおっしゃる。すぐに頭に来て、カッと逆上するキレやすい気質。断酒前の私のことだなー。
一文を抜き書きさせて頂いた。
『後悔してもはじまらない。ぼくは事件をおこした犯人が「悪いことをしてしまいました。被害者の方に申し訳ない」と言っているのを聞くと腹がたつ。事件の前に申し訳ないことに気づくべきではないのか。』
これは、本当にその通りだと、私も思う。また、問題飲酒の話になるが、ヒヤリ ハットした経験を生かして、酒と上手く付き合えない人は、取り返しのつかないことになる前に、やっぱり断酒するのが一番いい。
事件ではないけれど、問題飲酒も、自分や家族に対して悪いことをしている、という事に気づかなければ、後悔してもはじまらない、ってことになってしまうから。
ちょっと気になったので調べたら、元気な頃のやなせたかし先生は、明るいお酒を飲まれていたようだ。一度も原稿の締め切りを遅らせたことがないということで、仕事に差し障るような飲み方は、決してされていなかったようだ。さすが、プロフェッショナルだなー。凄い。
最後に、やなせたかし先生作詞の、アンパンマンのマーチの中の一節。
『何の為に生まれて 何をして生きるのか
答えられないなんて そんなのは嫌だ!
今を生きることで 熱いこころ燃える
だから君は行くんだ微笑んで』
とても、子供向けの歌詞とは思えない、大人だって、答えられない、哲学的な問いだ。
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