酒は、まるでオブラートに包まれた、薬のようだ。
今でもあるのだろうか。子供のころ、粉薬を飲むときに、母親が薄いセロファンのような小さな半透明のシートによく包んでくれた。
苦くて粉っぽいので、子供は、あの粉薬が苦手であり、なかなかそのままでは飲めない。それで、当時の家庭にはオブラートが常備されていたのだと思う。
良薬は口に苦しと言うが、最近では錠剤か、カプセル剤が普及していて、薬剤師が調合する粉薬は、とんと見かけなくなった。それと共に、オブラートもあまり目にすることはない。
ふと、オブラートって、あれは何だったのかな、と調べてみたら、デンプンから作られた薄い膜なのだそうだ。今でも、売っているようだ。
昨年(2013年)の9月5日にも『アルコールの処方箋(断酒175日目) 』というタイトルで酒に含まれるアルコールを薬に見立てて書いているが、今日はもう少し踏み込みたい。
以降、アルコール、エタノール、エチルアルコール、と三通りの呼び名が出てくるが、すべて化学式C2H5OHで示される、全く同一のものを指している。
ところで、酒に含まれるエタノールは立派な(?)医薬品の《外用殺菌消毒剤》であり、その効能・効果は、「手指・皮膚の消毒、手術部位(手術野)の皮膚の消毒、医療用具の消毒」と書かれている。
今は医者でもあまり注射はしないが、消毒の為、エタノールを含ませた脱脂綿で腕を拭かれた時の、あのウゥッとなる刺激臭を覚えている。あの液体を飲むわけだ。あれ単体では、とても飲めたものではないから、薄めて、色んな味付けをして、飲むのだ。
プロのコピーライター発案のキャッチフレーズで彩られ、カラフルな衣装を身に纏い売られている、何百種類何千種類あるか分からない酒類だが、それらはすべて、エタノールを、いろんな味のする液体のオブラートで包んである。数百円の安酒から、1本ん万円ん十万円の超高級酒まで、酒という酒は、大量に飲んだときの、人体への影響は全く同じである。
あれが好き、こっちが好み、と薀蓄を垂れたところで、結局、飲んだくれは、エタノールを包んでいるオブラートを選んでいるだけなのだ。
「うまい!」「喉ごし爽やか!」「極上!」「幻の酒!」「季節限定!」
エタノールの麻酔効果に幻惑されているから、この、色んな味のついた液体のオブラートで包まれたものを、「うまいなー」「やめられないなー」と、毎日飲んでいる(・・・いや、実態は、飲まされているのかな!?)わけである。
普通、薬は、身体に何かの症状が出て、それに対処するために、服用したり、塗布したりするものだが、全く健康体の大人が、夜な夜な、或いはもっと高じて、朝から晩まで、このエタノールという薬を、酒というオブラートに包んで服用しているわけである。
尚、その上、このエタノールという薬を含有する酒には、一般薬には必ず添付されている説明書に書いてあるような、
《使用上の注意をよく読み、用法・用量を守り正しくお使い下さい。 》
と言う注意事項がないので、いくらでも好きなだけ飲んでも良いようだ。
本来、薬には、主作用、副作用と言うものが有る。例えば風邪薬なら、風邪の諸症状を抑えるのが主作用だが、副作用として、眠気、倦怠感、喉の渇きなどがある。エタノールの主作用とは、酔う事なのだろうが、副作用のほうが、遥かに人体への影響が大きいような気がする。
病気でもないのに、主作用を求めて、こんな薬を野放図に飲んでいたら、身体のどこかがおかしくなるのも、むべなるかな。
アルコール、エタノール、エチルアルコールなどと呼ばれているものの正体は、化学式では、C2H5OHと言うもので、酒の中に含まれているものも、医薬品として売られているものも、全く同じである。下記のサイトに、薬品として見た場合の、エタノールの、「人に対する知見」というのが載っている。
致死量まで書かれている点が、エタノールの危険性がはっきりしていて、分かりやすく、とても興味深い。この文言を、もっと噛み砕いて分かりやすくして、日本全国の酒売り場、居酒屋、酒そのものに大きく貼ってほしいものだ。
ちょっと長いが、引用させて頂いた。
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(前略)
ヒトにおける知見
エチルアルコールは経口もしくは吸入により主に脳に作用し,初めは高次機能の抑制に働き,それから麻酔のようになる。ヒトの致死量は8-10 mL/kgもしくは1クォートのウィスキーあるいは0.5%以上の血液中濃度である。2) (Haag et al. 1951, von Oettingen, 1943)
重篤でおそらく非可逆的な中枢神経系の障害により死亡が発現する。急性中毒は視力,視野,目の協調運動及び距離の判断に影響を及ぼす。蒸気は,目及び気道系粘膜に軽度の刺激性を示す。ヒトと同様に動物においても耐性の形成が認められている。吸入では3500 ppmまでの濃度においては,刺激性を示さないか,自覚症状がないか,もしくは血中アルコール濃度の上昇も認めらい。2) (Treon, 1958)
中等度の用量は,欲求及び食事の吸収を刺激する。高濃度では,胃粘膜に対する刺激性を示す。2)(Jacobs, 1947)
0.5 g/kg未満の摂取量ではヒトの行動への影響は認めらず,0.5-2 g/kgでは何らかの障害が現れ,2 g/kgを超えると重篤な酩酊を示す。2) (von Oettingen, 1943)
慢性的摂取により,視覚障害及び随意筋の非協調運動を示す。2) (Browning, 1965)
毎日160 gを超えるアルコールの10年以上の摂取により,肝硬変を誘発する。 2) (Thaler, 1969)
肝臓におけるエタノールの特異的な酸化は,アルコール脱水素酵素活性の抑制にもかかわらず細胞内生化学の変化及び病理学的損傷を誘導し, NADを他の箇所から移動させる。2) (Mistilis & Birchall, 1969)
ヒトでは栄養不足の二次的変化として,電解質及び無機質の不均衡が生じる。心臓毒性は,マグネシウム減少症及び亜鉛減少症により発現する。エタノールは利尿剤であり,比較的大量の水分を消費すると,結果としてマグネシウム尿及び亜鉛尿が生じる。長期化した場合,心臓のマグネシウム 2) (Heggtveit, 1964) もしくは亜鉛 (Wendt et al. 1966) 2)の低下の二次的変化として心臓の障害が発現する。
(後略)
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これを読むと、日々自分が飲んで代謝してきた酒というものの恐ろしさが良く分かる。まかり間違えば、死に至る飲み物を毎日飲んでいたのだ。
これでも、あなたはまだ、酒と言う液体のオブラートに包まれた薬(エタノール/アルコール/エチルアルコール)を今宵も飲むのだろうか。
酒と言うものの本質を探れば探るほど、無知の怖さを思い知る。そもそも、その実態はエタノールと言う薬物なのであるから、一度ハマれば抜け出せなくなるのは、予め決まっていることなのだ。
これらを十分にわきまえた上で、かつ自己責任で飲むならば、問題はない。そして、もちろん、この場合は、飲みすぎて身体が悪くなっても、酒のせいにしてはならない。
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