それまで浴びるように酒を飲んでいても、身体のどこかに癌が見つかると、酒を断つ人が多い。
実は、私も、31年間の飲酒歴の中で、30代半ばの頃に唯一の空白期間がある。以前にも書いたが、顎に生じた悪性腫瘍(=癌)を患っていた時だ。
何となく、アルコールが身体には良くない感じがして、それが身体に及ぼす害悪への恐怖感の方が飲酒欲求に勝っており、大好きな酒を数ヶ月断っていたことがある。手術前には、腫瘍と言われていたが、手術後に取り去った病変組織の検査で、悪性腫瘍(=癌)だと判明した。
しかも、手術後の説明で、医師は、あまりにも顔の奥の方まで病変が浸潤しており、完全には取りきれなかったと、言っていた。完全に取り切れていないという事は、残った癌組織が再び増殖することもあるわけで、それを想像すると、途轍もない恐怖に駆られた。
それからどのくらいの期間か忘れたが、頭に癌再発のことばかり浮かび、酒どころではなかった...が、いつの間にか、また飲むようになっていた。この辺り、私はただの飲んだくれであり、喉元過ぎて熱さを忘れたのだと思う。
不本意ながらも酒と別れるということは、癌だけでなく、他の病気でもあることだろう。医者も、色んな病気のアドバイスで、アルコールは控えなさいと言うことが多いようだ。
酒が身体に良いか悪いかは別にして、元気な時にしか飲めない飲み物であるというのは、本当のようだ。それを証拠に、病気(アルコール依存症は除く)で身体が衰弱した場合、酒は飲まないだろう。病院の食事に酒が付くという話は聞いたことがない。
昭和30年代の専売公社のタバコのポスター「今日も元気だたばこがうまい!」というやつの酒版「今日も元気だお酒がうまい!」なのだろう。酒と言うのは基本的には、元気な人しか飲めない飲料なのだ。(「今日も元気だたばこがうまい!」は、結構気に入っているので、これまで何回かブログに書いた。)
だが、この元気な人の健康を蝕み、病気にするのも、酒である。厚生労働省のe-ヘルスネットというサイトの「アルコールによる健康障害」というページを見れば一目瞭然である。
癌になってしまったのんべーは、今まで飲んでいた酒の代わりに、無添加のフルーツジュースやら野菜ジュースやら青汁やらを飲み出したりする。その他、ネットや本などで、癌に効くと言われる、怪しげな食品をあれこれ買い求め、摂取したりする。
これぞ、泥縄であり、ジタバタしても、それまでの過飲酒・長期飲酒による身体へのダメージは取り消すことなど出来はしないのだ。
私も自分のことながら、最初から酒でなく野菜ジュースを飲んでおけば、少しは病気になる確率が下がったかもしれないのではないか、と思う。幸いにして、再発もなく、今のところ普通の生活を送っている。但し、フリーランスになってから四半世紀近く、健康診断と言うのを受けたことがないので、どこかに癌がいるのかもしれないが。(健診を受けたことが全然ないというのは語弊があり、一度だけ、40歳の時に自治体の簡単な健診を受けたことはある。)
アルコールの発癌性は、はっきりしていて、色んな研究機関で発表されている。
例えば、国立がん研究センターのサイトの予防研究グループのページ、
『飲酒と食道がんの発生率との関係について』には、はっきりと
「飲酒については、飲まないグループに比べ、1日当たり日本酒にして1合以上から食道がんのリスクが上がり、1合から2合のグループで2.6倍、2合以上のグループで4.6倍高くなっていました。」と書かれている。
もうひとつ。3年前の記事だが、欧州8カ国の大規模コホート研究ということで
『1日1杯の生ビールで発がんリスク上昇,男性の食道がんは1.4倍に』
と言う記事もあり、
「1日当たりのアルコール摂取量が男性で24g超の場合,発がんリスクが10%上昇するという結果が,BMJ4月7日オンライン版に報告された。男性の食道がんなどの上部気道消化管がんに限ると,リスクは1.44倍になったという。アルコール24gはビールの一般的な中ジョッキ1杯分(500mL),ワインのグラス2杯分(240mL)に相当する。」
との事である。
普通、○○に発ガン性があると分かれば、マスコミが大々的に○○を糾弾し、世の中大騒ぎになる。だが、このように、飲酒が食道がんのリスクを高めるということが分かっているにも関わらず、世の中平穏であり、当たり前に酒は売られている。更に、それを知ってか知らずか、のんべーは、これも当たり前に酒を飲む。
で、話は循環するが、当たり前に飲んでいたのんべーに癌が見つかると、慌てふためき、取り敢えず飲酒を中断するわけである。
この辺り、実に不思議である。
発癌性物質(アルコール)を含んでいるのが明らかなのに、酒だけは例外という事になるのかな。タバコでは、あれだけ肺癌になると騒いでいるのにネ...
このようなアルコールと癌の関係を考えると、何も考えずに飲んでいた頃を思いだしゾッとすると共に、断って良かったなと、つくづく実感し、私はホッと胸を撫で下ろすのである。
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