何故か知らぬが、飲酒欲は衰えたが、アルコール依存関連書籍の読書欲は衰えない。
衰えないどころか、片っ端から読んで、咀嚼し、自分の脳に蓄えてアルコールからのバリアにしている。アルコール中毒・依存の知識を入れれば入れるほど、私の中に潜み、飲酒を唆す小悪魔が縮んで行く。
『飲酒症 「アルコール中毒」の本体(田中 孝雄 著/中公新書)』
1986年(昭和61年)に出版された本だ。もう、絶版らしく、図書館の検索で見つけたのだが、閉架の書庫にあって、係の人に頼んで持ってきてもらった。本の帯には、
《貴方のアルコール中毒度は?飲酒とアル中に関する最新情報》
と書いてあるが、もはや最新情報ではない。けれども、内容的には、充実しているし、今読んでも遜色ない。
著者の田中先生は、アルコール依存症の治療では有名な久里浜病院にも在籍されていた。
その後、山梨県の精神衛生センター所長として赴任し、茅ヶ岳南麓の明野村で行われた、アルコール関連の調査について、先ずは分析が載っている。これを読むと、概ね、これまで私が読んで来た本に書いてあることが裏付けられていた。
次に、アルコール中毒患者の事例と言う事で、田中先生が診察・治療した典型的な患者数名について、かなり詳しく書いてある。昔も今も、アルコール依存そのものは、患者も、治療も、何も変わらない。
アルコール中毒患者の末路、と言う事で、田中先生が山梨県で行った調査から、次ようなことが書かれている。
・患者は、一般人より20年早死にする。
・肝硬変による死亡率は、健康な人の20倍。肺炎は14.8倍。自殺13.6倍。心臓病11.3倍。不慮の事故10.9倍。
・以上のことから、アルコール中毒患者は、断酒して立ち直るか、飲んで早死にするか、の二者択一しかない。
また、田中先生は、治療の過程で良く受ける質問として、
「アル中は節酒ができるか?」
「アル中は正常飲酒に戻れるか?」
があるが、きっぱりと、「一度アル中になれば、一生アル中」と言う、AAの主張の通りであるから、NO!であると書かれている。
短期的には正常飲酒や節酒も可能かもしれないが、長期経過の内には、断酒して踏みとどまるか、死亡郡に入るしかないと言う事らしい。
アルコール中毒は病気か?の章で、紀元前から現代に至るまでの世界のアル中の歴史が、詳しく書かれている。
本に「飲酒症」と付けたのも、実は、田中先生独自の、アルコール依存症に対する見解があるからだ。一般的に言われている、「アルコール依存症は病気である」説とは一線を画す考え方である。
私には難しかったのだが、フランスの数学者が創始した、カタストロフィー理論を、アル中に当てはめてみたら、とてもうまく説明が出来たのだそうだ。
触りだけでも紹介したいが、如何せん数学に弱い私の頭では、本文を読むのが精一杯であった(笑)
「アル中現象の本態は、飲酒システムに生じたカタストロフィーである。従って、これを新たに”飲酒症”と言う用語によって呼ぶことを提案したい。」とのことである。
最後に、”飲酒症”の予防はどうしたらいいのか、について次にような事が書かれている。これには、私も大賛成だ!
・行政が本気で”飲酒症”を大量飲酒を予防する積もりがあるなら、マスコミを最大限に利用して、アルコール消費量の総量抑制、酒税法操作、広告規制、アルコールの啓蒙教育を行えば、効率良く予防効果が上がるはず。
・国は、二兆円とも言われる酒税収入の内のたった数%を”飲酒症”の研究と対策に投ずるべきではないか?
この本が書かれてから、30年近く経っているが、上記2点については、何も改善されていない。アルコール問題は、「故意にほったからし」と言っても過言ではないだろう。
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