世に騙されぬため、学ぶため、二度と酒を飲まぬため、読書も継続中。さて、今日読み終えたるは、この本!
『メディア・バイアス あやしい健康情報とニセ科学(松永和紀 著/光文社新書)』
メディア・バイアスの恐ろしさ満載である。
例として、2006年に起きたこと。白インゲン豆ダイエット。これがテレビで放映されるや、我も我もとマネをして、テレビでやったとおりに、白インゲン豆を炒って粉末にしてご飯にかけて食べた人々が、次々にひどい下痢や嘔吐を催し、救急車で病院に運ばれた。
番組で紹介した白インゲン豆ダイエットの杜撰さについては、この本を読めば、呆れるばかりである。
又、2007年には、納豆がダイエットに良い、とテレビ番組でやったら、翌日日本全国のスーパーから納豆が消えたとか。この番組で紹介された納豆の効果は、捏造だったと言う。
大体、この手の番組では、視聴率を稼ぎたいがために、先ずは結論ありきで、人気の出そうなネタを探し、
①そこに都合の良さそうな研究成果をくっつける。
②私も効果がありました!と言う、どこのだれか分からない人の体験談を挿入する。
③肩書を持つ白衣の研究者の肯定的なコメントで仕上げる。
この三つで、視聴者をその気にさせてしまうのだそうだ。
第2章の「黒か白かは単純すぎる」で、とっても面白い例えが書かれていた。
テーブル上に、頑丈な鍵の付いた金庫があり、その中に1万人を殺傷出来る青酸カリが入っている。その金庫の隣には、4リットルのペットボトルに度数40度のウィスキーが満タンに入って置いてある。どちらが危険か?
多くの人は、もちろん青酸カリと答えるだろうけれど、しかし、金庫は鍵が無いと開かない。一方、ウィスキーは、フタを開ければ、誰でも好きなだけ飲める。一気に飲んだら、1リットル程度で死んでしまうだろうから、このウィスキーは4人分の殺傷能力があると言える。
しかし、金庫の鍵を持っている人が部屋に入って来たら、今度はどちらに恐怖を感ずるだろうか。
金庫とウィスキーの脅威を別々に考えるのではなくて、このウィスキーを飲んだ人が泥酔して、隣の金庫を破壊して青酸カリを取り出して暴れる、なんて言う複合したストーリーも考えられるが、これが一番おぞましいのではないかな。飲酒運転に通ずるものがある。
このように、化学物質の危険性は、そのものの量や使用条件によるリスクによって左右されるので、一概に白黒の判定は出来ない。
こんな風に、副題のあやしい健康情報とニセ科学について、豊富な実例を用いて、バッタバッタと切り伏せてゆく文章は、読んでいて痛快無比である。
私がとても参考になったのは、有機農業と無農薬野菜についてだ。農薬についての誤解もあった。この辺り、是非本書を読んで頂きたい。
この本を読んで、私はこう思った。
本当は、このメディア・バイアスの力こそを、《アルコールは毒だから飲まないようにしよう!キャンペーン》に使ってほしいものである。しかし、メディア運営者の懐を潤してくれるスポンサーが窮地に陥るようなことは、絶対にしないから、そんなキャンペーンあるわけないだろうけれどね。
最後の方に、著者からの秘伝が書かれているので、こっそり(!?)こちらに紹介しておこう。日常生活にはもちろん、酒を断つ上でも役に立つこと請け合いである。
※科学報道を見破る十か条
1.懐疑主義を貫き、多様な情報を収集して自分自身で判断する
2.「○○を食べれば・・・・・」というような単純な情報は排除する
3.「危険」「効く」など極端な情報は、先ず警戒する
4.その情報が誰を利するか、考える
5.体験談、感情的な訴えには冷静に対処する
6.発表された「場」に注目する。学術論文ならば、信頼性は比較的高い
7.問題にされている「量」に注目する
8.問題にされている事象が発生する条件、とくに人に当てはまるのかを考える
9.他のものと比較する目を持つ
10.新しい情報に応じて柔軟に考えを変えてゆく
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