『怒らないクスリ 専門医が語る、心が楽になる処方せん(熊井三治 著/小学館101新書)』
良い本を見つけた。
生来短気で、瞬間湯沸かし器の私は、怒りの感情が再飲酒へのトリガーとなるだろうことが分かっている。
それで、書店や図書館で、「怒り」とか「怒る」の背表紙を見つけると、必ず手に取ってパラパラとめくって、ざっと読んでみる。自分の心にスッと入って来そうな内容なら、購入したり、借りたりする。
この本の著者は、心療内科医・精神科医の熊井三治さんと言う方である。読んでみて、かなり臨床経験が豊富な医師であることが分かった。
前書きに、「怒り」は私たちの健康を害したり、一瞬の「怒り」が、私たちを一気に不幸のどん底に落とすこともある、と書いてある。「怒り」を「酒酔い」に置き換えても同じ事であるように、この本で述べられている怒りへの対処は、酒断ちにも有効である。
怒りは、心の中でふっと湧き起った芽の内に摘んでしまわないと、すぐに大きく成長し、自分の中から飛び出し、周囲へと丸でドミノ倒しのように拡散してゆくそうだ。確かにその通りで、何気ないことでふっと怒りが込み上げて、例えば自分の一番近くにいる人に当たり散らせば、その人にも怒りの感情が伝染し、また次の人へと伝わってしまう。
けれども、自分の心に湧いた時点で、その怒りを冷静に分析し、対処してしまえば、どうだろう。あたかも、たまに見つかる第二次大戦当時の不発弾を処理する自衛隊の専門家チームの如く、自分の怒りを、爆発する前に処理してしまうのだ。
自分の怒りを爆発させたら、自分だけでなく、周囲の人をも巻き込んで、怒りの連鎖が起きてしまうところを、このように冷静な対処が出来れば、とっても清々しい気分になるはずだ。
この本では、先ず、怒りは、そのまま外に出しても、内に抑え込んでも、どちらにしても身体には害があると、説く。
体脂肪増加、糖尿病、高血圧、慢性蕁麻疹、癌、など、怒りが原因の病気が並べられ、その実例も書かれている。何だか、アルコールの害と似ている。
この本のテーマは、「怒りのコントロールの極意は、怒りにコントロールされないこと」であり、それにはどうしたら良いか、が具体的に書かれているのだ。
怒りの受け止め方には、4つのタイプがある、とか、エゴグラムによる性格診断チェックリストで、自分がどんな性格のタイプなのか知っておく、とか、怒りの予防のためには、どんな対策があるのか、とか、怒りを人生から根本的に消すにはどうすればいいのか、などが、順を追って詳述されている。
最後に写真付きで、熊井先生の簡易バージョンの自立訓練療法・リラクゼーションの方法も載っている。
アルコール依存症絡みの話がひとつあったので、紹介しておく。
アルコール依存症だった中年男性のDさんは、入退院を繰り返しながらも、今では服薬と断酒会に通う生活で、断酒中である。怒りが出て来ると、酒を飲みたくなるのだが、そんなときは、トイレ掃除を始めるのだそうだ。そうすると、怒りが鎮まり、落ち着くとのことで、これまで幾度も、その方法で再飲酒の危機を乗り越えて来たのだと。それで、Dさんはトイレ掃除のエキスパートになってしまったというオマケ付き。
私の怒りの対処法は、自室にこもって、イヤホンでyoutubeなどで自分の好きな音楽を聴くことだ。30分もかからず心が落ち着き、怒りはどこかへ消えている。
皆さんの怒りの収め方、鎮め方にはどんなものがあるだろうか。
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