この本は、これまで私が読んだことのない、風変わりな内容であった。
けれども、著者の訴えていることは、実にその通りだと、腑に落ちた。絶望を味わったことのある人ならば、読めばピンとくるはずだ。
『絶望読書(頭木弘樹著/飛鳥新社)』(副題が「苦悩の時期、私を救った本」)
世の中の風潮は、何でもかんでもポジティブ思考であり、絶望しても、早く立ち直ったほうが良いと言う流れになっている。
私も、これまではそう思っていた。
前書きで著者が引用しているガンジーの言葉が、この本の内容を端的に表している。
「幸せだけを追い求める心が、悲劇を招き寄せる。
幸せは、悲しみと苦しみを克服した心が生み出すものなのだ。」
絶望して、精神的にどん底の期間を、きちんと過ごすことが大事だと、著者は言うのだ。
著者の頭木さんは、大学3年の時に難病にかかり、入退院を繰り返す生活を13年間も送った。つまり、13年間の絶望期間を過ごしたのだそうだ。
挫折、失敗、喪失などの、絶望的な転機が訪れたとき、どうしたらいいのか。例えば、子供の頃から何かに打ち込んで頭角を現わし、もう一歩でプロになれそうなところで怪我をしてしまったら…そこで、挫折するだろうが、生きてゆかねばならない。自分の人生のシナリオを書き換えなければならないのだ。
絶望した時こそ、絶望の書が必要になるそうだ。絶望の書は、絶望した自分に寄り添ってくれるから。悲しい時には、まずは悲しい音楽を聴くこと。十分に悲しんで、少し気分が落ち着いたところで、明るい音楽を聴くのが良いそうだ。
絶望した自分の気持ちに共感し、寄り添ってくれるのが、絶望の書物であり、音楽であり、映画であり、戯曲なのだ。友人・知人でも、自分と同じ経験をした人であれば、一緒に涙を流してくれる。ただ、それだけで、救われた気持ちになる。
この辺り、今、一緒に断酒している仲間は、同じように、断酒に至る飲酒の問題に悩み、断酒に踏み切り、そして断酒初期の辛さを味わっているから、お互いに寄り添えるのだと思う。
著者の言葉は続く。
絶望からすぐに立ち直ろうとするのは良くない。焦らず、絶望の高原をしっかり歩くことだと。悲しいときには、とことん悲しむのだと。
同じような絶望を経験しても、その悲しみが癒えるまでにかかる期間は人によって大きく違う。1か月で立ち直る人もいれば、1年かかる人もいる。早く立ち直った人が良いとか、凄いなどと言うことはなく、それはその人に必要な期間だったのだと。
後半では、具体的に著者のお勧めの本や落語、映画、ドラマなどが紹介されている。
太宰治、カフカ、ドストエフスキー、金子みすず、桂米朝・・・
ひとつだけ、アル中ならば聴いてぞっとする落語『らくだ』が、絶望の落語として出ていたので、紹介しておく。これ、是非、youtubeで視聴をお勧めする。最後のオチが、丸で過去の自分なのである。
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