昨日から、鼻の奥に違和感があり、あー、いつもの風邪の前触れだと思っていたら、案の定、風邪っ引きになってしまった。
頭痛がする、怠いという身体の症状で思い出すのは、二日酔いだ。断酒以来経験していないので、こんな時に思い出す。まー、自業自得のアレとは違い、風邪だと、家族の対応が温かいなー。
さて、『アルコール依存症は治らない《治らない》の意味』(なだいなだ・吉岡隆)[中央法規出版]という本を、たまたま、近所の図書館で見つけ、題名と著者に惹かれ、読んでみた。
よく家庭の医学コーナーにある、アルコール依存症の解説本とは違う。アルコール依存症とはなんぞやとか、どのように治療するのか、などの一般的な事は殆ど書かれていない。前半は、吉岡先生となだ先生とのメールによるやりとりが収録されている。後半の前半分が吉岡先生の、後半分が、なだ先生の、それぞれの依存症に関する考えが書いてある。
吉岡先生は、ソーシャルワーカーとして、なだ先生は精神科医として、それぞれアルコール依存症の方と接してこられた長年の経験と実績から、ハウツー本には無い、この病の本質が述べられている。
ここで、特異的なのは、吉岡先生は、自らが性依存症者であることを明かして、その葛藤と、回復への過程を、アルコール依存症のそれと絡み合わせて書かれているところだろう。
『依存症は、回復は可能だが治癒はない。治癒がないからこそ、成長が続く』と最後のほうで述べておられる。
なだ先生は、日本のアルコール依存症治療の草創期からの治療経験から、読めば読むほど良く分かることを書いておられる。しかも、先生の主義が、専門用語を使わずに誰にでもわかりやすく文章を書く、ということなので、とても読みやすい!
昔は、アルコール依存症者を入院させ、医者が治癒したと判断したら、退院させたのだそうだ。でも、その患者は家に帰ると、すぐに飲酒を再開することが多い。その患者や家族から、治っていなかったのか!と言われた時に、いや、それは病が再発したのだ、と答えていたのだそうだ。
そこで、なだ先生は、断酒出来ていること=治癒、ではない、と、当時の常識を先ず否定した。糖尿病患者を例に出して、糖分を控えることは必要だが、それは、治療の結果ではなく、病気を悪化させないための養生だ。これを、アルコール依存に置き換えてみると、アルコール依存を悪化させないための養生が断酒だ、と書かれている。
なるほど!私が実践中の断酒も、アルコール依存が治癒したからではなく、悪化させないための養生なんだ!
『そもそも、アルコール依存は、治癒などという言葉に、なじまない病気なのだ』とも断言されている。
意志と意地、というサブタイトルで書かれている、意志ではダメだったが、意地で一年間完全断酒したというアルコール依存症の患者とのやりとりが最高におもしろい。これは、是非、この本を読んでほしい。
因みに、なだ先生は、酒の飲めない体質だそうで、アルコール依存症の苦しみは直接には体験出来ないけれども、ヘビースモーカーで、日に60~70本も喫煙されていたのを、禁煙した経験があるので、依存からの離脱の苦しみは、分かると書いておられる。
なだ先生も、吉岡先生と同じく、『アルコール依存症に治癒はないが、成長はある』とおっしゃっている。
いきなり断酒を始めて、一生続けるんだと意気込んで、3日でスリップした人が、また先生のところへ来る。で、次は3ヶ月でスリップして、また来る。そうすると先生は、前は3日だったのに、今度は3ヶ月ということは、前回の30倍も長く断酒出来たのは、凄いね、と褒めるのだそうだ。
そして、なだ先生のしていることは、治癒させることを目的としたものではなく、記録に挑戦させているスポーツコーチとか教育のような仕事なんだと、思い当たったのだという。
読書感想文と言いつつ、取り留めもなく、長くなってしまった…(笑)とってもいい本だった。早速、沢山あるなだ先生の本の中から、アルコール依存症に関する本を、2冊図書館に予約してみた。また、その内に、感想を書きたいと思う。
一日一日、ただ飲まずに過ごすことはもちろんだが、自分が罹っている、一生治癒することのない、アルコール依存症という病気について、学び続けるということも重要であり大切なことだなー。
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