今日も、いた。
駅前のベンチで、朝から酎ハイのロング缶をグビリとやりながら、慌ただしく通り過ぎる通勤の人々をボーっと見ているアル中の爺さん。
私はふと、この爺さんの脳内には一体どんな光景が広がっているのだろうと思った。
酒は、24時間手に入る。コインを数枚握りしめて、コンビニへ行けば、買える。大人なら、買える。アル中の爺さんが欲しいのは、酒ではなくて、エタノールなのだが。
「エタノール下さいな!」と、店に行っても、飲料用のそれは売っていない。酒として購入し、飲む必要がある。
アル中爺さんを駅前で見かけ、朝からわざわざ私に何かを伝えるために出てきてくれたのかな?などと考えながら、電車に乗り込んだら、珍しく座ることが出来た。おぉー!たまにはこういうこともあるんだな、と喜んだのも束の間、何故か酒臭い。
臭いの原因は、私の右隣に座った初老の男。しかめっ面をして、しきりと眉間の辺りを右手の人差し指と親指でつまんでいる。これはどうも、昨夜飲みすぎた酒が、まだ体内に残っており、二日酔いで苦しいようだ。
この男、昨夜はたぶん、ニコニコして、「エタノール下さいな!」の連発だったのだろう。
飲み始めはワクワク、そのうちに心臓がドキドキして来て全身にエタノールが回り、何だかフワフワして来て、自分がどこにいるのかさえ分からなくなって来る。そして…いつの間にやら、飲み過ぎて、翌日を迎える。完全に酒にコントロールされているのだが、本人は気づかない。
酒断ち後、酒を飲みたくて飲みたくてどうしようもない状態は、身体がエタノールを求めているのだ。今まで入ってきたのが、なぜ最近入らなくなったんだ!と、いつものエタノール濃度を身体が求めているのだ。
もし、飲酒欲求が湧き起こったら、冷静になって、「あ!身体がエタノール下さいな!と騒いでるぞ。」と思ってほしい。酒ではなくて、エタノールを欲しがっている自分の身体。薬物中毒、薬物依存である。
しつこく繰り返すと、「薬物中毒、薬物依存」であり、その薬物は、エタノール。巷間ではアルコールと呼び慣わされており、嗜好性の高い酒という飲料に高濃度に入っている。
断酒後3年半を経て、最近私がストンと腑に落ちたことがある。酒を、味で飲む人と、酔いで飲む人。この違いが、適量で済ませることの出来る飲酒者と、とことん飲んでしまう問題飲酒者の違いだ。
味で飲む人は、酒の銘柄にこだわる。酔いで飲む人は、《酔いの素》エタノールが入っていさえいれば銘柄は何だって良いのだ。正に、「エタノール下さいな!」である。
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