今日は《啓蟄》。
二十四節気のひとつで、冬の間地中に潜んでいた虫が動きだす、春の始まり。
今の時期は、冬が去りつつあり、段々と暖かくなる。
3月は職場では移動の、学校は卒業の時期で、飲酒の機会も多くなる。
眠っていた飲酒の虫が、モゾモゾと動き出す人もいるかもしれない。
飲酒の虫、即ち《酒虫》だが、これは、中国では酒の精と言われ、これが体内に棲むと、どんなに酒を飲んでも酔わない大酒家になるそうだ。
これを翻案した芥川龍之介の短編小説『酒虫』と言うのがあって、インターネット上の青空文庫で読める。
以前に『酒虫』のことを書いているので、リンクしておく。
この小説だと、酒虫の棲んでいる人は、どんなに酒を飲んでも酔わないそうだが、私の身体に棲んでいる酒虫は、中国のそれではなくて、ただ酒を飲みたがるだけの虫のようだ。
今は、かなり縮んで、かつての大きさの何万分の一くらいになって、私の身体のどこかに潜んでいる。ほんの少しでもアルコールが入って来れば、忽ちにして元の大きさに戻る事だろう。
自分の飲酒に問題があることを感じた人は、体内に酒虫が棲んでいると思ったほうが良い。この虫は、駆虫することが出来ないが、断酒によってその勢いを失くし、潜伏状態にすることは出来る。
油断してはならないのは、先にも書いたが、断酒してかなりの期間が過ぎたからと言って、この酒虫がいなくなったわけではなく、どんなに小さく縮んでも、虎視眈々と復活の機会を伺っていることだ。
なので、アルコール入り飲料即ち、どんな種類の酒でも、或いはアルコールを含有した食品でも、常に警戒していないといけない。
一度静かにしていた飲酒の虫が動き出すと、これが暴れまわり、どんどん酒を要求してくるから。
私の体内にもいる、あなたの体内にもいる、一度棲みついた酒虫は、一生出て行かない。
芥川龍之介の小説では、酒虫を駆虫してもらった、お金持ちで健康だった主人公・劉は、その後落ちぶれて痩せ衰え、病気になってしまった。
このことについて最後に芥川が3つの可能性を論じている。
1.酒虫は、劉の福だったが、劉の病ではなかった。せっかくの福だったのに、追い出してしまったから、落ちぶれた。
2.酒虫は、劉の病だったが、劉の福ではなかった。もし、駆虫しなかったら、もっと早く死んでいたはずだ。
3.酒虫は、劉の病でもなければ、劉の福でもなかった。大酒飲みの劉と酒虫は一体だった。だから、酒虫を除かれてしまえば、劉ではなくなる。
この3つの内、どれが本当かは分からないと最後に芥川は書いている。
私たちには、2.しかないけれどネ!
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